LAT1（L型アミノ酸トランスポーター1）の役割
がん細胞は、正常な細胞よりも急速に成長・分裂するため、エネルギーと栄養素を大量に必要とします。その中で、LAT1（L型アミノ酸トランスポーター1）は、がん細胞の成長を支える重要な役割を果たしています。LAT1は必須アミノ酸であるロイシンやフェニルアラニンなどを細胞内に取り込み、細胞増殖に不可欠なタンパク質合成やmTORシグナル伝達を活性化させます。 興味深いことに、LAT1は正常な細胞では発現量が低い一方で、がん細胞では高発現しています。特に悪性度の高いがん細胞でLAT1の発現が顕著であることが、複数の研究により確認されています。この特性により、LAT1はがん細胞に特化した治療標的として注目されています。
LAT1阻害によるがん細胞増殖抑制メカニズム
LAT1を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制するいくつかの重要なメカニズムが考えられています：
必須アミノ酸の供給遮断
LAT1は、がん細胞が成長するために必要な必須アミノ酸を供給する主要な経路です。LAT1を阻害すると、細胞内へのアミノ酸取り込みが著しく低下し、がん細胞の増殖に必要な原材料が不足します。
mTORシグナル伝達の抑制
mTOR（ラパマイシン標的タンパク質）は細胞のタンパク質合成や増殖を調節する重要な分子です。がん細胞においては、 mTORの活性化にはLAT1を介して取り込まれるアミノ酸が必要です。LAT1阻害はmTORシグナル伝達を遮断し、がん細胞の増殖や生存能力を低下させます。
代謝ストレスの誘導
LAT1阻害はがん細胞に栄養欠乏の状態をもたらし、代謝ストレスを引き起こします。このストレスが増大すると、細胞死やアポトーシス（プログラムされた細胞死）を誘導することが示されています。