当社の科学技術責任者(CSO)金井好克博士が主要な貢献者として参加した研究論文が、2025年2月14日付で Nature Communications 誌に掲載されたことをお知らせします。本論文「Structural basis of anticancer drug recognition and amino acid transport by LAT1」は、マックスプランク研究所および横浜市立大学の李勇燦(Yongchan Lee)博士が筆頭著者を務め、LAT1(L型アミノ酸トランスポーター1)の構造と抗がん剤認識に関する最先端の知見を提供しています。
LAT1の構造解析がもたらす、がん代謝と創薬の新たな可能性
LAT1は、がん細胞が栄養を取り込むために必須のトランスポーターであり、多くの固形がんで高発現しています。そのため、LAT1阻害はがん治療の新たなアプローチとして注目されています。しかし、これまでLAT1の詳細な分子メカニズムや薬剤との相互作用は明らかになっていませんでした。本研究では、李博士、金井博士、および国際研究チームがクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を活用し、LAT1の6つの高解像度構造を解析しました。この成果により、LAT1がどのようにアミノ酸を選択的に輸送し、抗がん剤と相互作用するのかが明らかになりました。
研究の主な成果:
• LAT1の高解像度構造の解明 – LAT1の分子レベルの構造を可視化し、アミノ酸輸送に関与する重要な残基を特定。
• 抗がん剤認識メカニズム – LAT1阻害剤の結合部位をマッピングし、より効果的な阻害剤の設計指針を提供。
• LAT1の構造変化の解明 – LAT1がアミノ酸を輸送する際の構造変化を捉え、阻害のターゲットとなる可能性を示唆。
アトランセンファーマのLAT1創薬への応用
アトランセンファーマは、この構造解析の知見を活かし、LAT1阻害剤の開発を加速させています。本研究は、LAT1のがん代謝における役割と、阻害剤との相互作用を詳細に解明し、新規がん治療薬開発の基盤を築くものです。
アトランセンファーマは、前臨床開発段階のLAT1阻害剤を有しており、最適な薬剤特性の確立と腫瘍モデルでの有効性評価を進めています。基礎科学を臨床応用へとつなげ、革新的ながん治療薬の開発を目指します。研究の詳細は以下よりご覧ください:https://www.nature.com/articles/s41467-025-56903-w